We’ll pull you where you want to go.

という志を掲げ、岡さん率いるTUGBOATが大海に飛び出したのは1999年のことらしい。ということはその頃大学3年。初めての司法試験に惨敗したあたり、そして、人生は長く、そして短いということにようやく気づき始めたあたり。で、高校1年から毎月欠かさず、隅から隅まで舐めるように、愛でるように読み続けていた広告批評。羨望のまなざしでクレジットを読んでいると、ようやく電通やら博報堂やらが大きな会社で、たくさんの人、そしてたくさんの才能がいる場所だということを理解し始めていた。そして、その頃TUGBOATは生まれていた。そう考えると、ずいぶん昔のことのよう。最初の印象は確か「麻生さんっていう人は若いのにこのチームの4人目か、すげーな」という感じだったと思う。若いのに(自分より6個上だが)。

その後、これは後から気づくんだけど、学生時代に関わった某無料プロバイダーの立ち上げでうっかりTUGBOATとつながっていた。コールセンターで電話とってたんだけど、顧客に配る接続用のCD-ROMとかブローシャーとかのクリエイティブがイカすな、と思って毎日楽しかった記憶がある。で、ある時ある瞬間から、電話の量がハンパなく増えた。何でだ? と思って社長に聞いたらCMをはじめたと言う。それがこれ。

ぼくは個人的に「終末感」が好きで、例えばそれをSMAPの「俺たちに明日はある」に感じたりするんだけど(分かんないだろうな)、いや、新しいビジネスをはじめたベンチャーのサービスCMで終末感はまずいだろう、と思いつつも楽しくて仕方がなかった。自分が関わっているビジネスがメディアと表現を通してものすごいスピードで多数の人に知られる、ということがどういうことかようやく理解できた。そして、その結果としてぼくは毎日「あんな何を言っているか分からないCMに広告費使うんだったらサービス改善しやがれ」というクレームの電話に見舞われることになり、お前こそこんな電話かけてる暇あったらうちの会社の株買えよチクショーと言えるはずもなく、ただただそこにあったのは現実としての消費者。

ちなみにこのプロバイダー、ビジネス的には奇抜すぎてうまくいかなかったけど、できることはたくさんあったかもしれないけど、本当は「当たって」良いモデルだったなと思う。「フリー」なんていう本が出ちゃうこんな世の中だし。

その後ぼくは就職をし、今に至る。いくつかの大きなインターネットサービスや、いくつかの派手なキャンペーンに関わりつつ、主にデータとロジックの波にもまれながら、広告とも販促ともつかないよく分からない場所に、い続けている。最初の会社を辞め、次に移るとき、望めばもっと早く広告の仕事をしていた。プロダクションで血と汗と涙にまみれながら、何かを世に出せていたかもしれない、いや、出していたはずだ。ただ、行かなくてよかったかもしれないな、と最近思う。99パーセント言い訳だけど、広告には冷静さが必要だ。情熱だけでクライアントが動くなら、コンペで松岡修造に勝てないではないか、と。そういうことは何一つ分かっていなかった。当時は。で、その間もTUGBOATはぼくのこころに傷を残し続ける。

きりがない。

改めて振り返ると、想像していた以上に「感じたCM/TUGBOATの仕事」の割合が高くて驚かされる。どういう言葉で表現していいのかまったくわからないけれど、人の心の奥深く、それでも届くか届かないかくらいのところにとどまっているものを何故これほどまでに上手に解放してくるんだろう、と、どの作品を見ても思う。描かれるモチーフが日常であってもとんでもない非日常であっても、どこに何をどのくらいのスピードで投げればいいのかがきっちりと分かっている感覚を受ける。そういうのはリサーチやロジックでは絶対に、絶対に、絶対に分からない。だからこそ恐ろしい。恐ろしいほど、美しい。

で、10年。いろんなことがあった、ような気がする。でもようやく、自分の気持ちさえ、覚悟さえ決まれば少なくとも同じフィールドで戦えるところまでは来た感覚はある。随分な遠回りをした感覚も同時にあるけど。事実、クライアント訪問時に彼らの存在が感じ取れたことは何度もある。間接的に仕事をしていたことも、ある。それは、広告が好きで好きで仕方ないミーハーな人間で、それでいて世の中の酸いも甘いもわかり始めた人間にとって、少しだけ、ほんの少しだけ感慨深い。10年。さて、どうしようかな。これから、10年。

あ、何が言いたかったかというと、この本がとてもよかった、ということです。結論は先に言えって習わなかったかって? まあまあ、そうかたいこと言わずに。

TUGBOAT 10 Years
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TUGBOAT
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さて、どちらに踏み出そうかしら。