マドラの「批評」がなくなり、電通の「Advertising」も発刊ペースが落ちた今、「広告」と堂々と宣言しながら書店に並ぶ雑誌はこれだけになってしまった。なかなかにして寂しい。
多分2日に1冊くらいのペースで雑誌を買っていて、当然全部を読み切れないんだけど、そんな中でも「ちゃんと読む雑誌」の筆頭格。今回はテーマがテーマなだけに、襟を正して、というと言い過ぎだけど、よりちゃんと読んだ。そして、言語として、意味概念としての広告はもはや終わりつつある、と改めて感じた。
現時点で広告に求められている役割は、企業側のブランド、プロダクト、サービスなどの対象物を、特定もしくは不特定の消費者に対してコミュニケーションする時に、そのマーケティング上の目的が最も適切に伝わるように両者間のギャップを埋めることだと勝手に理解している。その役割を最も適切に果たせるのが広告であると。
それを表現から考えれば「クリエイティブ」と呼ぶし、媒体から考えればそれは「メディアマーケティング」だし、目的が反応率なら「ダイレクトレスポンス型」だけど、それらはすべてソリューションとしての広告の一側面であり、ともあれ、ギャップを埋めるために日々いろいろなアイデアが生まれては世に出され、そして消えていっている。
ターゲット選定、消費者インサイトの発見、コミュニケーション開発、メディアバイイング、オペレーション、と。提案掲載可否申込入稿レポーティング、と。
だが、時代は確実に、そして急速に変化している。
従来は主体客体のパワーバランスが明確で、企業からの一方的なメッセージングを消費者が凡そ無批判に受容しながら幸せな日本が作られていたし、もちろん媒体を個人が作り、もしくは個人が媒体化するなんて、誰ひとりとして考えていなかった。広告主と媒体と広告会社は三権分立のごとく絶妙な均衡を保ちながら、消費者に対して「権威的な理想」を描き続けた。何しろ、分かりやすい時代だった。しかし現在、既に「権威」が存在しない。「フラット」なんて言うのは煽り過ぎだと思うけれど、少なくとも「絶妙な均衡」は崩れ去っている。
結果としてテレビCM崩壊だ、ソーシャルメディアだ、キズナだ、なんてことが言われる前から広告主企業は自社で顕在/潜在顧客のリストをDBにし、日々コミュニケーションを行い続けている。それは残念ながら「広告」とは表現されず「CRM」なんていう呼び名になっているけれども、やりたいことはいわゆる広告と何ひとつ変わらない。消費者ひとりひとりのプロファイルやニーズの理解が進み、より効率的なコミュニケーションが可能になったと判断できれば、メディアを使ったメッセージの一斉配信からリソースをシフトするのも、何一つ不思議なことではない。惜しむらくは、CRMみたいな領域に広告会社が今ひとつ踏み込めていないこと。マージンで食えないから仕方ないんだけど。
ちなみに、企業側にとっての「ソーシャルメディア」の意義はいろいろあるけど、One2Oneのコミュニケーション内容が不特定多数に晒されることが最大のポイントだと考えている。The Truman Showだ。
みんなが注目する「権威」が存在しないんだから、「広く告げる」ことは難しいし、無理してそうしても、目的を達成することはできないだろう。広告は終わってしまうのか。
もちろん「いわゆる広告的」な仕事が全くなくなるとは思わない。消費者との「距離感」は近ければ近いほど良いわけではもちろんなく、ほどよく「遠くから叫ぶ」ことが有効な場合だってある。ただしその割合が相対的に減少してくのは確実なわけで、それが現実のものとなった場合、広告会社はもちろん「広告代理店」であるはずもないし、広告会社でももはやないのかもしれない。ただし、広告のコミュニケーション開発において今まで必死に行ってきた企業と消費者とのギャップを埋める行為にはものすごい可能性があるし、この雑誌の中にもいくつもそんな例が掲載されている。素敵だ。
認知を上げるとか、ロイヤルティを上げるとか、売上を上げるとか、大事なんだけど、もう少しピュアなレイヤーで勝負することになるんじゃないかと思う。生活をもっと楽しくとか、日常をもっと楽しくとか。それこそ「マーケティング」の枠からはみ出したところで。その方が明らかに楽しい。ワクワクする。どう儲けるか、はちゃんと考えないといけないけれども。
メディアは死んでも、強いアイデアは生き残る。たとえそれが「広告」と呼ばれなくなったとしても、ずっとずっと考えていきたいし、その結果ひとりでも多くの消費者、いや、人間が幸せになってくれればいいな、とそう思う。そして、どんなスタイルであれ、一生をそこに捧げる覚悟を、ひとり密かに、した。
広告よ、ありがとう。これからもよろしくお願いします。
![広告 2010年 07月号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51c1fkjaFWL._SL160_.jpg)