ちょっと前に、こんなことをつぶやいたことがあった。
APIの一般化以降、データと伝達のためのコミュニケーションが分割され、それに加えソーシャルメディアという場でのデータ消費総量が増えてきたこともあって、データプロバイダがコミュニケーションを深く考えなくなっていく、と思う。それはつまり「WEBデザイン」の終焉。
たとえば本や雑誌におけるエディトリアルデザインのように、コンテンツ制作者がその伝達方法まで考えるのは当たり前のように考えていたけど、WEBの登場、そしてCSSやXMLの登場によりコンテンツデータとインターフェースの分離が進んだことによって、少なくともWEBにおいてはそれが当たり前ではなくなってしまった。今こうして書いているエントリもRSSに乗ればただのテキストになりGoogle Readerやらなにやらで消費され、iPhoneで閲覧すればiPhone用に最適化(WPtouchね)されたレイアウトで、大して色気のないデザインに覆われ消費される。どんなに綺麗にインターフェースを飾っても、極端な話、それを一度も見ない人だっているのだ。
また、index.htmlを基点としてWEBサイトがスタティック(たとえそれがダイナミックに生成されていたとしても)に構築されていたとしても、index.htmlへの来訪割合というのは人々の検索リテラシーの向上により確実にその値を減らしていて、このブログを例にとっても、トップから5件のエントリが表示されているページを見ている人もいれば、このエントリに直接たどり着いている人もいる。いかなる来訪に対してもそのコンテンツ消費体験を最適化するなんていうのは無茶な話なわけで、最大公約数的な対応になるのもやむを得ない。
つまるところ、コンテンツの消費主体との接点というレイヤーにおいて、どのようなデザインでそれを消費するかの主導権が消費者側に移ってしまった、ということ。
YouTubeのembedによる貼り付けを例に出すまでもなく、今現在のWEBコンテンツに重要な要素のひとつはポータビリティである。ソーシャルメディアという「単なるプラットフォーム」にWEB全体のトラフィックが移行していることを考えても、どこかにどっしり構えて(たまにプロモーションでもしつつ)人を待つ、なんていうのはナンセンスで、いかにshareabilityを高めていくかが極めて重要であることは間違いない。それはスキームだけではなくコンテンツそのものについても同様。たとえば「つっこまれビリティ」なんてのがそれに当たる。人はWEBにおいてももはやひとりでコンテンツを消費しないのだ。RT万歳、である。
で、何が言いたいのかというと、そういう現状における「WEBデザイン」っていうのは何なんだろう、ということ。ここまでその「コンテンツ」の制作主体については考えて書いていないけれど、CGMについてはもちろん、企業のWEBサイトだって”co.jp”上だけで消費されるはずもなく、ソーシャルストリームに乗せられフラットに評価されることになる。そうなった時、自由に表現できる”www”という「場」だったはずのWEBが急激にプラットフォームに支配されることになる。YouTubeのチャンネルのカスタマイズ性の低さに悶絶したWEBクリエイターは数知れずだと思うし、Facebookの「ページ」だってお世辞にもデザイン上の自由度が高いともいえない。一方で、ユーザビリティを最大限に考慮しながら美しくデザインされたWEBサイトへのトラフィックは減る一方なのだ。
限りあるリソースを自社のWEBユーザビリティの最適化に割くべきか、ソーシャルメディアにおけるユーザー体験の最適化に割くべきか、その割合は企業によって異なるだろうけど、大きくソーシャル側にシフトしつつあるのは間違いない。自社サイト以外は単なる集客チャネルのひとつであり、主戦場はあくまで自社サイトである、という時代はもう終わったのだ。では、WEBデザイナーはどこで何をデザインしたら良いのか。いわゆる「WEBデザイン」は終わったのか。
自分自身今はWEBデザイナーでもなんでもないので、こんなことを言うのは超余計なお世話以外のなにものでもないんだけど、思うところを。かつて、広告のプランニング業務をしていた人々が徐々に「コミュニケーションデザイナー」などと名乗り出しているところにヒントがあるんじゃないかな、と。広告屋さんの仕事を単に企業のコマーシャルメッセージをいかに消費者に届けるかに限定する必要はなくて、そもそも広告を作る過程で数限りなく消費者のこと、市場のこと、トレンドのこと、その他いろんなことを考え抜いているわけで、そこで蓄積されたもののアウトプット先は数限りなくある。「コミュニケーション」の「デザイン」がソリューションとして適用できるところならどこにでも。「広告」はなくなるかもしれないけれど「コミュニケーション」はなくならない。それにしてもうまいこと言うよな。さすが電通。
じゃあ、WEBデザイナーはどうするのか。結論、「インタラクションデザイナー」になればいいのだと思う。WEBデザイナーはWEBの誕生以降、極めて特異で極めて複雑なものをデザインしてきている。そもそも能動的なメディアであり客体とのインタラクションを想定して考えなければならず、更新性を担保するためにモジュール化を考えたり、時には印刷というアウトプットまで面倒を見なければならない。そんな面倒で仕方がないメディアをデザインしているという経験を活かすべき場は腐るほどあるのだ。たった今でさえ、無意味に「領収書あり」みたいなボタンを何も考えずに表示して押さないと先に進まない駅の自動券売機のタッチパネルとか、どう考えても売上の最大化に向かって最適化されていない飲料の自動販売機とか、そういうものがたくさんある。IPv6やらでいろんなものがネットワークにつながった段階でそれをきちんとデザインしなければいけないというニーズは必ず発生する。トラッキングも出来るしね。そのニーズに対応できるのは、今「WEBデザイナー」という職種についている人たちじゃないかと、割と真剣に思っている。
取り急ぎ、マウスとキーボードと、ペンタブを捨てよう(あとでまた拾うけど)。小さなディスプレイの中にはない、広大なステージが、まだまだたくさん、きっとある。
